ES9038Q2Mを採用した高音質設計 DAC基板(DAC-ES9038Q)のハードウェアの仕様です.
特徴
基板の特徴です.音質部品の採用,機能の選択を可能とした設計となっています.
- 22.4MHzまでのネィティブDSD(DoPでは5.6MHzまで)再生
- 384kHz/32bitまでのPCM再生(SPDIFでは192kHz/24bit)
- ES9038Q2Mのアナログ出力は電流出力
- I-V変換,ローパスフィルターにはTIの超低ノイズ,超低歪,広帯域の精密オーディオ・オペ・アンプを採用
- オペアンプはソケット対応のため交換可能(I-V変換は2回路入り,LPFは1回入りオペアンプ)
- OS-CON 9個搭載
- LPFにはパナソニックのECHUコンデンサを採用
- ES9038Q2Mの各電源は独立したLDOで生成したローカル電源方式
- オーディオ入力はI2S,SPDIF(同軸,光)の選択可能
- 7種類のデジタルフィルター特性を選択可能
- 2つのI2Cコネクタ(Grove仕様)と1つの可変抵抗用コネクタ(Grove仕様)
- 128x64Pixel OLEDを接続することで再生モード,サンプリング周波数,出力レベル等の表示が可能
- 可変抵抗を接続することで出力レベルの調整が可能
- PCM時のDPLL帯域をノーマルとナローで選択可能
- マイコンをパワーダウンモードにしてクロックを停止させる(マイコンを停止)SLEEP機能
- マスターモードに対応した回路設計
- 基板サイズ:100mm x 90mm x 20mm
再生仕様
ES9038Q2MのデータシートではネイティブDSDではDSD1024まで,DoPではDSD256に対応となっていますが,そこまで再生できる環境がないので確認ができていません.なのでネイティブDSDでは25.5MHzまでDoPでは5.6MHzまでとしています.同様にPCMの再生でもデータシートでは768kHzまで対応となっていますが384kHz /32bitとしています.
電流出力設計
ES9038Q2Mのアナログ出力は電流・電圧どちらでも設計が可能ですが,電流出力で設計しています.電流出力の方がDNRが良くなります.I-V変換とローパフフィルター用のオペアンプはソケット対応なので自分の好みのオペアンプに交換可能にしました.出荷時はTI(Texas Instruments)社のSoundPlus高性能バイポーラ入力オーディオ・オペアンプOPA1611/OPA1612の組み合わせにしています.場合によってはオペアンプの載ってない状態の基板があっても良いかとも考えています.
ローカル電源方式
ES9038Q2Mの電源(VCCA,VCCR,VCCL,DVCC)は独立したレギュレータで供給しDACの近くにレイアウトして低インピーダンスで接続を可能にするローカル電源方式としています.そしてコンデンサはOS-CONと積層セラミックコンデンサを並列にして高周波ノイズを抑えています.
OLED表示、アッテネータ
Grove仕様のOLEDを接続することで再生モード(PCM/DSD/DoP),サンプリング周波数,入力ソース(I2S/COA/OPT),アッテネーターレベル(dB),デジタル・フィルターそしてDPLLのアンロックの表示が可能になります.また,Grove仕様のポテンショメータを接続することでアッテネーター・レベルの調整が可能になります.なお,OLEDに関してはI2CインターフェースのSSD1306を採用している128x64pixelのOLEDであれば表示可能です.ただし,コネクタのピン配置には注意が必要です.当然,ポテンショメータも10kΩ程度の可変抵抗が使えます.
DPLL帯域幅設定
ES9038Q2Mデータシートには「For best performance, the DPLL bandwidth should be set to the minimum setting that will keep the DPLL reliably in lock.(最高のパフォーマンスを得るには,DPLL帯域幅を,DPLLを確実にロック状態に保つ最小設定に設定する必要があります.)」とあります.ジャンパスイッチによってDPLL帯域幅をノーマル(デフォルト値)とナロー(最小設定値)に設定できます.
SLEEP機能
SLEEP機能はマイコンをパワーダウンモードに設定します.これによってマイコンのクロックは停止されますので仮死状態になります.OLEDやES9038Q2MへのI2Cアクセスもしなくなりますので更なるノイズ低減に寄与します.ジャンパスイッチで設定可能ですが一度設定したら復帰するにはリセットスイッチを押すか,電源の再投入が必要です.なお,この時OLEDは「SLEEP」表示となり固まります.デジタル・フィルター特性などの設定はSLEEPに入る直前の状態になります.もちろん再生は問題なく行われます.
マスター・モード対応設計
ES9038Q2Mはスレーブ・モードとマスター・モードに対応しています.一応,回路(ハードウェア)的にはマスター・モードに対応可能(のはず)ですが動作は未確認です.
基板外観
基板の外観です.画像上でクリックすると拡大します.
使用方法
基板単体で使用する場合は、±12V(200mA@+12V,100mA@-12V)電源を供給しI2S、SPDIFの同軸または光入力を選択すれば良いです.
LOBDASと接続する場合にはLOBDASのCN10またはCN11と本基板のCN1を接続しLOBDASのCN12,CN13は使用しません.そして本基板のJP13の1-2ピンをショートします.
電源
電源は±12Vから±15V(200mA@+12/+15V,100mA@-12V/-15V)範囲で供給します.12.5Vから15Vを供給する場合は,別途+5V(100mA)電源を供給してください.その場合はJP12をオープンにします.
出力電圧
PCM:2.1 Vrms (0dB@1kHz)
DSD:1.47 Vrms (-3dB@1kHz)
ジャンパスイッチの設定
入力ソースの設定、デジタル・フィルター特性の選択、DPLL帯域幅の設定、歪補正の有効化そしてSLEEP機能の設定はジャンパスイッチのオープン/ショートで行います.
入力ソースの設定
- JP10ショート:SPDIF同軸
- JP11ショート:SPDIF光
- JP10,JP11オープン:I2S(デフォルト)
デジタル・フィルターの選択
- JP5,JP6,JP7オープン:Apodizing fast roll-offフィルター(デフォルト)
- JP5,JP6オープン、JP7ショート:Brick wall filterフィルター
- JP5,JP7オープン、JP6ショート:Corrected minimum phase roll-offフィルター
- JP5オープン、JP6,JP7ショート:Minimum phase slow roll-off フィルター
- JP5ショート、JP6,JP7オープン:Minimum phase fast roll-offフィルター
- JP5,JP7ショート、JP6オープン:Linear phase slow roll-offフィルター
- JP5,JP6ショート、JP7オープン:Linear phase fast roll-offフィルター
- JP5,JP6,JP7ショート:Apodizing fast roll-offフィルター
DPLL帯域幅の選択
- JP9オープン:ノーマル(デフォルト)
- JP9ショート:ナロー
歪補正の有効化
- JP8オープン:無効(デフォルト)
- JP8ショート:有効(DAC-ES9038Q基板では差が無いので無効と同等)
SLEEP機能
SLEEP機能を有効にするにはCN3の4ピンと6ピンの設定で行います
- オープン:ノーマル状態(デフォルト)
- ショート:SLEEP状態
デジタル・フィルター特性
入力に0dB@1kHzのインパルス(+)と矩形波データを入力した時の各デジタル・フィルターの応答波形です.
OLED表示
Grove I2C OLEDディスプレイ128×64を接続したときの表示例です.
コネクタ機能説明
CN1(B6B-XH-A(LF)(SN))
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | VCCO | – | アイソレータデバイス用電源出力 |
2 | GND | – | グラウンド |
3 | MCLK | IO | マスタークロック |
4 | BCLK | IO | PCMビット・クロック/DSD DATA_CLK |
5 | DATA | I | PCMデータ/DSD DATAL |
6 | LRCK | IO | PCMフレーム・クロック/DAD DATAR |
CN2(B3B-XH-A(LF)(SN))
LOBDASからES9038Q2Mを制御する場合に接続します。現在LOBDASのファーム・ウェアが未対応のため未使用。
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | NC | – | 未接続 |
2 | SCL | I | I2Cバス クロック |
3 | SDA | IO | I2Cバス データ |
CN3
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | MISO | IO | マスター入力スレーブ出力となるデータ信号 |
2 | +5V | – | 5V電源 |
3 | SCK | IO | シリアル・クロック |
4 | MOSI | IO | マスター出力スレーブ入力となるデータ信号.SLEEP選択信号 |
5 | XRESET | I | MCUリセット信号 |
6 | GND | – | グラウンド |
CN4(B2B-XH-A(LF)(SN))
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | 5V0 | – | 5V電源 |
2 | GND | – | グラウンド |
CN5(B3B-XH-A(LF)(SN))
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | +12V | – | +12V電源 |
2 | GND | – | グラウンド |
3 | -12V | – | -12V電源 |
CN6(FH-1x6SG/RH)
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | DTR | I | データ・ターミナル・レディ.シリアル変換アダプターモジュールのDTRする |
2 | RXD | I | UART受信データ.シリアル変換アダプターモジュールのTXDに接続する |
3 | TXD | O | UART送信データ.シリアル変換アダプターモジュールのRXDに接続する |
4 | NC | – | 未接続 |
5 | NC | – | 未接続 |
6 | GND | – | グラウンド |
CN7(Grove Femal Header-DIP-4P)
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | SCL | O | I2Cバス・クロック |
2 | SDA | IO | I2Cバス・データ |
3 | +5V | – | +5V電源 |
4 | GND | – | グラウンド |
CN8(Grove Femal Header-DIP-4P)
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | AO/SIGA | O | ポテンショメータのアナログ出力.Atmega328P-PUのA0に接続 |
2 | SIGB | IO | 未使用.Atmega328P-PUのA1に接続 |
3 | +5V | – | +5V電源 |
4 | GND | – | グラウンド |
CN9(Grove Femal Header-DIP-4P)
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | SCL | O | I2Cバス・クロック |
2 | SDA | IO | I2Cバス・データ |
3 | +5V | – | +5V電源 |
4 | GND | – | グラウンド |
CN10(PH-1X3SG)
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | LVOUT- | O | Lチャネル逆相出力(I-V変換後の電圧出力) |
2 | GND | – | グラウンド |
3 | LVOUT+ | O | Lチャネル正相出力(I-V変換後の電圧出力) |
CN11(PH-1X3SG)
Pin # | 信号名 | I/O | 説明 |
1 | RVOUT+ | O | Rチャネル正相出力(I-V変換後の電圧出力) |
2 | GND | – | グラウンド |
3 | LVOUT- | O | Rチャネル逆相出力(I-V変換後の電圧出力) |
マイコン/ファームウェア
マイコンはArduino Unoで使われているATMEGA328P-PUを採用しています.Arduinoのブートローダを書き込んでいますのでArduio IDEでファームウェアの書き込みが可能です.ソケット対応ですので秋月等でブートローダ書き込み済みのデバイスを購入することで独自のファーム・ウェアの開発もできます.
参考資料
参考までに回路図を載せておきます.詳細のところは変更されている可能性があります.
基板の頒布
ES9038Q2M DAC基板(DAC-ES9038Q)はLINUXCOMネットショップで頒布しています.