LOBDAS DAC-BD34301セットを注文された方から,InnoMaker HiFi DAC Hatを接続したシステムで音が出ないという相談を受け,当該システムで解析をさせてもらうことになりました.音が出なかった原因はケアレスミスも含めいくつかあったのですが,LOBDASに実装しているCPLDの変更(機能追加)が必要なことも判明したので,そのことについての報告です.
マスタークロックの周波数
今回のシステムはRaspberry Pi 4にRpi HiFi DAC Hatの組み合わせで,Rpi HiFi DAC HatのGPIOピンからBCLK,LRCK,DATAそして基板上のクロックのバッファICに直接はんだ付けしたジャンパー線でMCLKを取り出しLOBDASのI2Sコネクタに接続しています.LOBDASとDAC-BD34301は同梱したハーネスで接続しています.
ケアレスミスなどの原因を取り除き動作確認すると音は出るようになりましたが,OLEDのサンプリング周波数の表示が半分であったり,オシロスコープでの波形観測では,ソースのサンプリング周波数によっては波形が正しく出力されていないといったことが起きていました.
これらの不具合の原因はマスタークロックの周波数の違いによるものでした.
BD34301EKVのデータシートのシステムクロックの項目では
「PCM モードに必要なシステムクロックは,MCLK, BCLK, LRCLK です.システムクロックは同期させる必要がありますが, 位相を合わせる必要はありません.MCLK には 22.5792 MHz または 24.5760 MHz のクロックを入力してください.」
との記載があり,MCLKの周波数設定は22.5792MHz/24.5760MHzとなっています.また,LOBDASのサンプリング周波数検出回路でのMCLK周波数は同様に22.5792MHz/24.5760MHzを想定して設計されています.
これに対して,Rpi HiFi DAC Hatのマスタークロックの周波数は45.1584MHz/49.512MHzですのでBD34301EKVに正い設定がされていないことになります.特にLOBDASでのサンプリング周波数検出回路で検出されたサンプリング周波数によってBD34301EKVの設定を変更しているので,ここでの後検知は問題です.
対策
対策ですが,BD34301EKVのシステムクロックは同期している必要があるが位相を合わせる必要はないとのことなので,Rpi HiFi DAC Hatのマスタークロックを単純に2分周(1/2倍)すれば良いことになります.さすがにRpi HiFi DAC Hatの基板上で2分周するのは現実的ではないのでLOBDASで2分周します.CPLDのプログラミングを変えるだけなので最小限の変更で済みます.
最終的には2分周したMCLKをサンプリング周波数検出回路に入力し,I2SのMCLKに出力することになります.BD34301EKVはMCLKが45.1584MHz/49.512MHzでも動きそうなので,サンプリング周波数検出回路では2分周したクロックを使い,I2Sにはそのまま45.1584MHz/49.512MHzで出力しようかとも思いましたが,データシートにその設定の記載はないのでやめておきました.
そしてMCLKの周波数の変更はジャンパーピンの設定でできるようにしています(但し,今のところEXコネクタからのI2S接続のみ).J3の17-18をショートすることでMCLKを 1/2倍に,オープンで1/1倍になります.これでOLEDの表示も,サンプリング周波数によっては異常だったオシロスコープでの波形も正常になりました.
BD34301EKVはマスタークロックが22.5792MHz/24.5760MHzという事もあり,LOBDASが45.1584MHz/49.512MHzを受けるという想定はしていませんでした.今回相談を受けて確認をさせてもらったことで45.1584MHz/49.512MHzに対応できるようになりました,ありがとうございます.
推奨されるRpi HiFi DAC HatとLOBDASとの接続
さて,LOBDASではRaspberry PiとI2S接続するにはI2Sアイソレータ基板の使用を,さらにマスタークロックを必要とする場合にはRPD-P5122+ ZERO WMOとの組み合わせを推奨しています.
今回のシステムではHiFi DAC Hatからマスタークロックを含むI2Sの信号をジャンパー線で取り出して直接DAC基板とI2S接続しましたが,I2Sアイソレータ基板を使う事もできます.I2S信号のジャンパー線は短くできれば良いですが物理的にある程度の長さが必要になる場合にもI2Sアイソレレータ基板は有効です.
I2Sアイソレータ基板を使う場合にはRpi HiFi DAC Hatにジャンパー線をはんだ付けする必要があります.はんだ付けはU7の4ピンとGPIOコネクタの22ピンです(以下の画像を参照).
そしてI2Sアイソレータ基板を接続した状態です.
画像では分かりませんが,CN4のはんだ面のピンがRpi HiFi DAC HatのWIMAのフィルムコンデンサと干渉してしまうので,はんだ面のピンのでっぱりをニッパで切ると良いです.尚,画像のI2Sアイソレータ基板のIC1とそのまわりのチップ抵抗,コンデンサそしてCN5は実際には実装されません.
このようにI2Sアイソレータ基板を使うことで10cm〜15cm程度まではケーブル長を延ばせますが,それ以上例えば1mとなるとI2S to LVDSドライバ,レシーバ基板の出番になります.これについては確認後,追記したいと思います.
コメント
ロームのBD34301EKV楽しく聴いております
以前主に聴いていたDACは中華製のES9038 Q2MDACでしたが、かなり違います
解像度、中高域の透明感が素晴らしい、やはり中華製とは違うわとの感じ
やはり、IV変換のOPアンプの発熱が精神衛生上気になるところです、ここはどうしても発熱するところですから
「2種類のDACの同時再生」の記事参考になりました
将来の拡張性を感じさせてくれます
私の場合シングル構成でDAC追加するか、他のDAC「DAC-A4499」追加して聴き比べするか悩ましいですね
ところでAK4499は当分の間は再配布できないのでしょうか
よろしくお願いします
sugujiiさん、コメントありがとうございます。
昨年10月のAKMの半導体工場火災によりAK4499EQは入手困難となりDAC-A4499は頒布出来なくなりました。
一方、12月の初めに旭化成から「2020年10月に発生した半導体製造工場の火災事故により一部製品の供給に影響が出ておりましたが、2022年のサンプル出荷再開に向けて現在準備を進めております」とのメッセージが公開され、詳細は2022年1月に発表するという事です。
一般に販売されるのはそれ以降になると思いますので再頒布にはまだ時間がかかりそうですが、光が見えてきたと言うところでしょうか。